Citations:沈滞
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Japanese citations of 沈滞
- 1907, 夏目漱石, 虞美人草:
- 文明の民ほど自己の活動を誇るものなく、文明の民ほど自己の沈滞に苦しむものはない。
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- 1909, 田山花袋, 父の墓:
- 溝の日に乾く臭と物の腐る臭と沈滞した埃の交つた空気の臭とが凄しく鼻を衝いた。
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- 1910, 有島武郎, 二つの道:
- いわゆる中庸という迷信に付随しているような沈滞は、このごとき人の行く手にはさらに起こらない。
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- 1911, 押川春浪, 本州横断 癇癪徒歩旅行:
- 国家の最も憂うる処は、貧乏でもない、外敵でもない、宏大な官庁が無い事でもない、狭軌鉄道が広軌鉄道にならぬ事でもない、実に国人意気の沈滞と民心の腐敗とである。
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- 1912, 永井荷風, 妾宅:
- 年は二十五、六、この社会の女にしか見られないその浅黒い顔の色の、妙に滑っこく磨き込まれている様子は、丁度多くの人手にかかって丁寧に拭き込まれた桐の手あぶりの光沢に等しく、いつも重そうな瞼の下に、夢を見ているようなその眼色には、照りもせず曇りも果てぬ晩春の空のいい知れぬ沈滞の味が宿っている――とでもいいたい位に先生は思っているのである。
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- 1914, 小島烏水, 天竜川:
- しかのみならず、私は憫れなほど、水に欠乏してゐる都市に住んでゐる、水も何米突若干銭と、秤量にかけるやうにして、高い租税を払はなければ飲めないばかりか、川水の姿を見ようとすれば、鉄橋の下の、鉄漿溝のやうに、どす黒く濁つた水を、夕暮の空に、両岸の燈火の幻影で、美しく粉飾して、眺めくらして、はかない欲望を充たすのである、さもなければ、偶に古城の御濠の水を、石垣の曲りくねつた黒松の行列や、埃だらけで、灰色に化けてゐる名ばかりの、青柳の樹影に、透かし見て、水藻や、バクテリアで、毒々しく淀んだ、沈滞腐敗した水のおもての青みどろの色に、淡い哀愁の情を寄せてゐなければならない。
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- 1915, 素木しづ, 青白き夢:
- すべての空気が平和に沈滞してゐた、そしてなにか幸福のありさうな、いゝ事のありさうな明日は、矢張り変化のない今日であった。
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- 1916, 与謝野晶子, 母性偏重を排す:
- 何事も沈滞していて中心となるまでに焦点を作らない状態である。
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- 1917, 和辻哲郎, 創作の心理について:
- 従って彼らの表現欲は内生が沈滞し、平凡をきわめているに比べて、滑稽なほど不釣合に烈しい。
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- 1927, 甲賀三郎, 支倉事件:
- 松飾などは夙に取退けられて、人々は沈滞した二月を遊び疲れた後の重い心で懶げに迎えようとしていたが、それでも未だ都大路には正月気分の抜け切らない人達が、折柄の小春日和に誘われて、チラホラ浮れ歩いていた。
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- 1931, 坂口安吾, 黒谷村:
- 女衒もすでに黒谷村を去つて、沈滞した村の軒からは、何か呟く呪ひの声が洩れてくるもののやうに感ぜられた。
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- 1932, 中井正一, 「壇」の解体:
- あらゆる――「壇」の沈滞の一因は即ちそれである。
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- 1933, 萩原朔太郎, 郷愁の詩人 与謝蕪村:
- その鮓は、時間の沈滞する底の方で、静かに、冷たく、永遠の瞑想に耽っているのである。
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- 1934, 岸田國士, 近代劇論:
- が、ディドロの百の議論よりも、当時の沈滞した劇壇に一風変つた意見を以てのぞみ、その「劇芸術論」に於いて、演劇に於ける写実主義の歴史を開いた一人の作家に注意すべきである。
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- 1935, 牧野信一, 浪曼的時評:
- 雑誌「文学界」などにしてから、多くの同人を擁しながら沈滞しがちなのは、時世の所為といふよりは、同人の怠慢であるといふより他なく、その他の文芸雑誌にしても、新作家のみ無選択に過ぎる登用が禍してゐるのではなからうか。
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- 1936, 大阪圭吉, 動かぬ鯨群:
- 驚きと喜びと、不安の一度に押寄せた思いで、たった今まで沈滞した諦めの中に暮していた女は、激しい動揺とためらいに突落されたのだった。
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- 1937, 久生十蘭, 魔都:
- 目も鼻も整い過ぎるくらいにきっぱりとしているが、永らくの荒んだ淫蕩生活で、それらはみな一種形容し難い沈滞と疲労の翳を見せ、それはそれなりに廃頽した美しさを示している。
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- 1938, 島崎藤村, 新生:
- 遠い外国の旅――どうやらこの沈滞の底から自分を救い出せそうな一筋の細道が一層ハッキリと岸本に見えて来た。
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- 1939, 宮本百合子, 今日の文学と文学賞:
- それにひきつづく略十年間、一九三三年頃まで文学の主潮はプロレタリア文学にあり、日本の歴史のふくむ複雑な数多の原因によってこの潮流の方向が変えられると共に、文学は、その背景である社会一般の生活感情にあらわれた一種の混迷とともに画期的な沈滞と無気力に陥った。
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