Citations:或る
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Japanese citations of 或る
- 1872, 福沢諭吉, 学問のすすめ:
- このたび余輩の故郷中津に学校を開くにつき、学問の趣意を記して旧く交わりたる同郷の友人へ示さんがため一冊を綴りしかば、或る人これを見ていわく、「この冊子をひとり中津の人へのみ示さんより、広く世間に布告せばその益もまた広かるべし」との勧めにより、すなわち慶応義塾の活字版をもってこれを摺り、同志の一覧に供うるなり。
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- 1891, 巌谷小波, こがね丸:
- 或る日いと広やかなる原野にさし掛りて、行けども行けども里へは出でず。
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- 1892, 北村透谷, 徳川氏時代の平民的理想:
- 然れども彼等の境遇は、功名心も冒険心も想像も希望も或る線までは許されて、其線を越ゆること叶はず、何事にも遮断せらるゝ武権の塀墻ありて、彼等は声こそは挙げたれ、憫れむべき卑調の趣味に甘んぜざるを得ざりしは、亦た是非もなき事共なり。
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- 1895, 坪井正五郎, コロボックル風俗考:
- 或る者は入れ墨なるも知るべからず、或る者は覆面の模樣なるも知るべからずと雖も、余は是等の中には唇飾も有るならんと考ふ。
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- 1896, 樋口一葉, たけくらべ:
- 龍華寺の信如が我が宗の修業の庭に立出る風説をも美登利は絶えて聞かざりき、有し意地をば其まゝに封じ込めて、此處しばらくの怪しの現象に我れを我れとも思はれず、唯何事も恥かしうのみ有けるに、或る霜の朝水仙の作り花を格子門の外よりさし入れ置きし者の有けり、誰れの仕業と知るよし無けれど、美登利は何ゆゑとなく懷かしき思ひにて違ひ棚の一輪ざしに入れて淋しく清き姿をめでけるが、聞くともなしに傳へ聞く其明けの日は信如が何がしの學林に袖の色かへぬべき當日なりしとぞ。
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- 1899, 正岡子規, 病牀譫語:
- 例へば水遊びによりて衣服を濡らしたる時、やや遠きに遊びて帰りの遅かりし時、角力を取りて障子襖を破りたる時、或る器物または食物を得んとてねだりたる時、これらの場合に父母はこれを叱るのみならず、甚だしきはこれを打ち、これを縛し、あるいは押込塗込の中に閉ぢ込めてこれを苦むる事あり。
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- 1900, 木下尚江, 鉱毒飛沫:
- 今ま余が親しく聞き得たる所の一二を記るさんに、栃木県足利郡筑波村なる或る老人をば巡査五人して或は手を取り、或は足を取り之を路傍の水中に投じたり。
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- 1901, 黒岩涙香, 幽霊塔:
- 併し余り不思議な註文ゆえ「ですが貴女は何故其の様な事をお望みなさる」美人「分る時には分りますよ」と、先刻も余に云った同じ言葉を繰り返し、更に続けて「貴方が若し此の事を承知為さらずば、私は貴方の叔父御にお目に掛りません」余「ト仰有っても幽霊の出る室、イヤ出ると言い伝えられて居る室を、私の居間にするとは其の訳を聞いた上で無ければ私もお約束は出来ません」美人「イヤ私は自分では神聖と思う程の或る密旨を持って居るのですから、其の密旨を達した上で無ければ何事も貴方へ説明する事は出来ませんが――」密旨、密旨、今時に密旨などとは余り聞いた事も無い。
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- 1902, 山路愛山, 透谷全集を読む:
- 当時の僕の論旨は歴史にても小説にても共に人事の或る真実を見たる上にて書くべきものなり。
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- 1903, 新渡戸稲造, 今世風の教育:
- 徳性を養うには自力で、或る程度まで進むことが出来るものである。
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- 1905, 夏目漱石, 吾輩は猫である:
- 或る日例のごとく吾輩と黒は暖かい茶畠の中で寝転びながらいろいろ雑談をしていると、彼はいつもの自慢話しをさも新しそうに繰り返したあとで、吾輩に向って下のごとく質問した。
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- 1906, 二葉亭四迷, 余が翻訳の標準:
- いわば、自分で独り角力を取っていたので、実際毀誉褒貶以外に超然として、唯だ或る点に目を着けて苦労をしていたのである。
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- 1907, 三島霜川, 解剖室:
- そこで或る生ツ白い學生などが、風早學士に向ツて、此樣なことを訊ねたことがあると假定する。
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- 1908, 石川啄木, 天鵞絨:
- が、此源助が、白井様の分家の、四六時中リユウマチで臥てゐる奥様に、或る特別の慇懃を通じて居た事は、誰一人知る者がなかつた。
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- 1909, 若山牧水, 古い村:
- 先生はこの近くの或る藩士の零落した老人で、自分の父が呼寄せて、郡長の前などをも具合よく繕つて永くその村に勤めさせてゐたものであつた。
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- 1910, 狩野直喜, 日本國見在書目録に就いて:
- さうして此書に著録されて居る書籍が二志にないこともあり、或る點より云ふ時は、隨分其足らざる所を補ふことが出來るし、又これによつて我國に支那から如何なる書が傳つて居たか、我國の學風が、本家たる支那の學風と全く同じかつたか否と云ふ樣な問題を解決するにも少なからざる便宜を與ふるのである。
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- 1911, 岩村透, 不吉の音と学士会院の鐘:
- 巴里に於ける官立美術学校の附近に或る下宿屋がなる。
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- 1912, 北原白秋, わが敬愛する人々に:
- 或る人――の告訴に依り、身を斬られるほど耻かしい奸通被告事件の一方の被告として、某分署長及某主任検事の再三の同情ある取做しがあつたに拘らず、色々の事情から改めて検事局の摘撥を止むなく受けるやうに為つた事も事実です。
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- 1913, 田村俊子, 木乃伊の口紅:
- みのるは其の翌る日から毎日机に向つて、半分草しかけてあつた或る物語の續きを書き初めた。
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- 1914, 島田清次郎, 若芽:
- 彼れの処女作が或る文学雑誌にかかげられた時、彼の恩師は偉大なる文学者の卵であると推賞した。
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- 1915, 木下杢太郎, 少年の死:
- 一方に海があつて、それに鉤手に一連の山があり、そしてその間が平地として、汽車に依つて遠國の蒼渺たる平原と聯絡するやうな、或るやや大きな町の空をば、この日例になく鈍い緑色の空氣が被つてゐる。
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- 1916, 森鴎外, 高瀬舟縁起:
- 或るとき此舟に載せられた兄弟殺しの科を犯した男が、少しも悲しがつてゐなかつた。
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- 1917, 大杉栄, 新しき世界の為めの新しき芸術:
- 此の「諸説」は、日本ではまだ或る理由から、さほど明瞭には「紛々」としてもいないが、若し民衆芸術に就いての議論がもっと盛んになり、或は其の議論の実行が現われるようになれば、どれほど「紛々」として来るか分からない。
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- 1918, 杉田久女, 梟啼く:
- が幸いに火事は或る一室の天井やベッドを焦したのみで大事に至らず、病弟の容体も折合って、三昼夜半の後には新領土の一角へついたのである。
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- 1919, 喜田貞吉, 長吏名称考:
- 川辺政一君の報告によれば、備後の或る地方で皮田をエタの下に見ているのも、これを示したものであろう。
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- 1920, 幸田露伴, 平将門:
- 其の児の未だ成長せぬ間、親戚の或る者は其の田邑を自由にして居たが、其の児の成人したに至つて当然之を返附しなければならなくなつた。
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- 1921, 平林初之輔, 唯物史觀と文學:
- だから過去の時代の社會的意識が複雜多樣な相を示しているにも拘らず、それは或る共通の形態或は一般觀念の中に動いているのであつて、これは階級對立が全く消え去らない限りは完全になくならぬということは怪むに足りぬ。
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- 1922, 宮本百合子, 男女交際より家庭生活へ:
- 人間が、或る場合自己の天分によって却って身を過つことがあるように、一国にしても、或る時には、その是とすべき伝統的習俗によって、却って真実な人間的生活に破綻を生ぜしめることが多くあります。
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- 1923, 内藤湖南, 易疑:
- 又禮記禮運も繋辭傳と關係あるらしく、其の太一と天地陰陽四時との關係を説いてあるのは、亦繋辭傳の太極、呂覽の太一を説くと類し、河出馬圖とあるは、繋辭傳の河出圖、洛出書と類し、その上秉蓍龜といひ、卜筮瞽侑、皆在左右といふは、いづれも兩者の關係を示す所の者であるから、畢竟繋辭傳、呂氏春秋並に禮運の三書は其製作の前後如何は論究せずとも、互に或る關係を持つものなることは推測し得ると思ふ。
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- 1924, 岡本綺堂, 青蛙堂鬼談:
- かれは奥州の或る藩中の野村彦右衛門という侍で、六年以前から眼病にかかって、この頃ではほとんど盲目同様になった。
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- 1925, 細井和喜蔵, モルモット:
- 或る日、彼女は例の如く動物を使いに伴れて行って帰ったとき言った。
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- 1926, 梶井基次郎, 『新潮』十月新人號小説評:
- 殊に蜜蜂の描寫、八年前の或る朝の記憶は秀れてゐる。
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- 1927, 岸田國士, 可児君の面会日:
- つまりね、その土地が、いろいろの点から見て、理想的な土地なので、或る金持が買ひ占めにかゝる。
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- 1928, 小林多喜二, 一九二八年三月十五日:
- それは誰れでもが囚はれる――そして、それは或る場合、當人を事實全く氣狂ひのやうにしてしまうかも知れない――堪え難い、ハケ口のない陰鬱な壓迫だつた。
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- 1929, 犬養健, 亜剌比亜人エルアフイ:
- 或る晩、駐屯軍の軍医が馬を飛ばしてホテルに来ました。
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- 1930, 三木清, 認識論:
- 我々の感性的表象も或る意味では存在を模寫するであらう。
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- 1931, 中山太郎, 屍体と民俗:
- 屍体の或る部分が呪力を有し、または薬剤として特に効があると考えた民俗も、かなり大昔から行われたことである。
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- 1932, 長岡半太郎, 物理學革新の一つの尖端:
- これと前後して明瞭になつたことは、原子が陽電氣を帶ぶる核と、陰電氣を帶ぶる電子の或る數からできてゐて、陰陽相均しき場合に普通の状態に在ることである。
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- 1933, 神西清, 垂水:
- 至は五泉家にとつて遠い姻戚に当る、今は死に絶えた或る一族の遺子であつた。
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- 1934, 徳田秋聲, 霧ヶ峰から鷲ヶ峰へ:
- 平原のハイキングならまだしもだが、少くとも山岳の多い日本でのハイキングに或る程度山へ入らなければ意味を成さないのに、今年のやうにかうじめ/\した秋霖が打続いたのでは、よほど運が好くなければハイキングの快味を満喫するといふ訳には行かない。
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- 1935, 徳田秋声, チビの魂:
- わづか十年しか此世の風に曝されてゐない咲子は、或る意味で既に一つの完成品に凝まりかけてゐるやうに思へたが、年と共に其のなかにあるものが成長して行くことを考へると、何をされるか解らないやうな不安を感じて、半分厭気が差して来た。
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- 1936, 西尾正, 放浪作家の冒険:
- 私が或る特殊な縁故を辿りつつ、雑司ヶ谷鬼子母神裏陋屋の放浪詩人樹庵次郎蔵の間借部屋を訪れたのは、恰も秋は酣、鬼子母神の祭礼で、平常は真暗な境内にさまざまの見世物小屋が立ち並び、嵐のような参詣者や信者の群の跫音話声と共に耳を聾するばかりの、どんつくどんどんつくつくと鳴る太鼓の音が空低しとばかりに響き渡る、殷賑を極めた夜であった。
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- 1937, 戸坂潤, 認識論としての文芸学:
- さて芸術一般がそうだとして、その内で特に文芸は、認識として或る一つの特権を持っている。
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- 1938, 中谷宇吉郎, 雪:
- 何万円という多額の金を出して、アメリカの最新式除雪車を購い入れ、日本へ持って来た時、或る場合にはそれが「立往生」を余儀なくされるのも当然の成り行きであると考えられる。
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- 1939, 金史良, 光の中に:
- だが或る晩彼が薄暗い婆やの部屋で飯をかき込んでいる様を見た時は、はっと驚いて立ち止ったのである。
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- 1940, 新美南吉, 坂道:
- 俗に「ふみきり」といふペタルで、つまり普通の自轉車のやうに、或る程度の惰性がついたらペタルの上で足を休ませてゆくといふことが出來ない。
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- 1941, 高田力, ベーシック英語:
- それ故に或る人々にとつては、動詞形は最初からとても征服しきれないやうな困難を與へる。
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- 1942, 石原莞爾, 最終戦争論・戦争史大観:
- はこれを運用する武将の性格や国民性に依って相当の特性を認めらるるけれども、軍隊発達の段階に依って戦闘に持久性の大小を生じ、自然会戦指揮は或る二つの傾向の間を交互に動いて来た。
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- 1943, 波多野精一, 時と永遠:
- それは一の中心と他の中心とを結び附ける線の上に位し、それ無くば到底相交り難きむしろ相反撥する外なき二つの實在者の間に立ち、兩者を繋ぐ楔を提供し、かくて或る意味においては實在的他者が主體の中に入り來るを可能ならしめるものとして、主體を孤立の状態從つて自滅の運命より救ひつつ、生本來の性格である他者への存在を確保せしめる。
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- 1944, 三好十郎, おりき:
- 中年 ハハハ……全体、あのばさまなんて者は、へえ、村で……俺達の村で、へえ、なんと言ったらええだが……(この或る意味では雄弁な男が、手に取るように知っている老婆のことに就いて説明しようとすると、どこからどんな風に言えばよいのか直ぐには言葉が見つからない。
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- 1945, 太宰治, お伽草紙:
- 旧家の長男といふものには、昔も今も一貫した或る特徴があるやうだ。
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- 1946, 原民喜, 冬日記:
- 幅の広い、粗天鵞絨の安楽椅子にレエスの覆いを掛けた一等の車室で、或る独り旅の客が身を起した――アルブレヒト・ファンクワアレンである。
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- 1947, 海野十三, 鞄らしくない鞄:
- 「実は、僕はこの前からしばしばこちらへ伺って博士に或る物の御製作をお願いしてあったんだ。
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- 1948, 坂口安吾, ヨーロッパ的性格 ニッポン的性格:
- 或る時、人を殺しまして、役人に追われて、お寺へ逃げこみました。
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- 1949, 田中英光, さようなら:
- その為、脊椎カリエスの男の子は帰宅して一月ほどした或る朝、縁側から庭石に落ちて死んだこと。
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- 1950, 久坂葉子, 灰色の記憶:
- 私達のクラスで一番よく出来る男の子が、或る日、岩波の本をよんでいた。
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- 1951, 堀辰雄, 「エル・ハヂ」など:
- 私が昔「エル・ハヂ」を譯したとき、或る音樂雜誌に出てゐたこのショパン論を、その少し前に讀んで、ジィドの文體の魅力についていろいろと思ひあたる節があつた。
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- 1952, 喜多村緑郎, 癖:
- ……或る者は洋間との境へ金屏風をかこつて退くが、凡て沈黙のうちに行はれる。
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- 1953, 片山廣子, 大へび小へび:
- 聖者は一人の弟子と共にいろいろな困難と戦ひながら休むひまなく西に東に伝道してゐる時のこと、或る山かげのせまい道を通りかかると、道に蛇が寝てゐたが、めづらしくもないので弟子は跨いで通つた。
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- 1955, 小金井喜美子, 鴎外の思い出:
- 「これは茶掛によかろうと思うが」と、或る時お兄様がいわれます。
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- 1956, 宮城道雄, 山の声:
- 或る日、私が教えて貰った曲を忘れたので、師匠が怒って、思い出すまでは、家に帰らさんといって、夜になっても帰して貰えなかった。
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