Citations:一縷
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Japanese citations of 一縷
- 1895, 泉鏡花, 夜行巡査:
- されば路すがらの事々物々、たとえばお堀端の芝生の一面に白くほの見ゆるに、幾条の蛇の這えるがごとき人の踏みしだきたる痕を印せること、英国公使館の二階なるガラス窓の一面に赤黒き燈火の影の射せること、その門前なる二柱のガス燈の昨夜よりも少しく暗きこと、往来のまん中に脱ぎ捨てたる草鞋の片足の、霜に凍て附きて堅くなりたること、路傍にすくすくと立ち併べる枯れ柳の、一陣の北風に颯と音していっせいに南に靡くこと、はるかあなたにぬっくと立てる電燈局の煙筒より一縷の煙の立ち騰ること等、およそ這般のささいなる事がらといえども一つとしてくだんの巡査の視線以外に免るることを得ざりしなり。
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- 1899, 正岡子規, 曙覧の歌:
- そもそも歌の腐敗は『古今集』に始まり足利時代に至ってその極点に達したるを、真淵ら一派古学を闢き『万葉』を解きようやく一縷の生命を繋ぎ得たり。
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- 1900, 押川春浪, 海島冐險奇譚 海底軍艦:
- 考へて見ると隨分覺束ない事だが、夫でも一縷の望の繋る樣にも感じて、吾等は如何にもして生命のあらん限り、櫻木大佐の援助を待つ積りだ。
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- 1902, 岡本綺堂, 父の墓:
- 泉下の父よ、幸に我を容せと、地に伏して瞑目合掌すること多時、頭をあぐれば一縷の線香は消えて灰となりぬ。
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- 1905, 小栗風葉, 深川女房:
- 医者が今日日の暮までがどうもと小首をひねった危篤の新造は、注射の薬力に辛くも一縷の死命を支えている。
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- 1908, 吉江喬松, 木曾御嶽の両面:
- 径は一縷、危い崖の上を繞って深い谿を瞰下しながら行くのである。
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- 1910, 伊藤左千夫, 水害雜録:
- 況や一縷の望を掛けて居るものならば、猶更其覺悟の中に用意が無ければならぬ。
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- 1913, 田村俊子, 木乃伊の口紅:
- けれども、みのるは矢つ張りその一縷の光りをいつまでも追つてゐたかつた。
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- 1916, 夏目漱石, 明暗:
- この悪魔の重囲の中から、広々した人間の中へ届く光線は一縷もないのでしょうか。
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- 1919, 芥川龍之介, 尾生の信:
- 尾生は水の中に立ったまま、まだ一縷の望を便りに、何度も橋の空へ眼をやった。
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- 1920, 菊池寛, 真珠夫人:
- 生と死の間の懸崖に、彼女の細き命は一縷の糸に依つて懸つてゐた。
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- 1922, 内田魯庵, 鴎外博士の追憶:
- 鴎外が抽斎や蘭軒等の事跡を考証したのはこれらの古書校勘家と一縷の相通ずる共通の趣味があったからだろう。
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- 1924, 宮本百合子, 心の河:
- 而も、彼女は、このありふれた出来事の裡に、何ともいえない一縷の優しさ、温かさを感じずにはいられなかった。
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- 1926, 小酒井不木, 人工心臓:
- 私は絶大の悲哀に沈みましたが、何だか其処に一縷の希望があるようにも思いました。
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- 1928, 林芙美子, 新版 放浪記:
- ――一縷の望みを抱いて百瀬さんの家へ行ってみる。
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- 1931, 甲賀三郎, 罠に掛った人:
- 然し、伸子にして見ると、このどうにもならない窮境を、どうにかして切抜けたいと、そこに一縷の望みを抱くのにも無理はなかった。
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- 1933, 木下尚江, 臨終の田中正造:
- 一念こゝに至りて煩悶やる方なく、断じて獄食をなさじとの決心を起し、庄左衛門と云へる同志が二本の鰹節を杖とも柱とも頼みて、生命を一縷の間に繋ぐこと三十日に及びぬ。
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- 1936, 神西清, 母たち:
- さう、たしかに一縷の望みは残されてゐる。
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- 1937, 久生十蘭, 魔都:
- 甚だ心細い反証だが今のところこれだけが一縷の望みなのである。
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- 1938, 島崎藤村, 新生:
- 戦争前、美術学校の助教授が巴里を発つという際にも、その他の時にも、まだ岡は一縷の望みをそれらの人達の帰国に繋いでいた。
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- 1940, 田中英光, オリンポスの果実:
- 一縷の望みだけをつないで、また車をつかまえると「渋谷、七十銭」と前二回とも乗った値段をつけました。
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- 1941, 徳田秋声, 縮図:
- しかしその一縷の望みも絶え、今はその死を安からしめるために人々は集まり、慰めの言葉で臨終を見送ろうとするのだった。
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- 1943, 正岡容, 小説 圓朝:
- 随分、風変りにも程があるが、無理矢理出家してしまったればこそ、いまだ若僧の身分ではあるが、法の道の深さありがたさは身にしみじみと滲みわたり今やようやく前途一縷の光明をさえみいだすことができそうになっているではないか。
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- 1945, 太宰治, パンドラの匣:
- 人間は不幸のどん底につき落され、ころげ廻りながらも、いつかしら一縷の希望の糸を手さぐりで捜し当てているものだ。
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- 1946, 坂口安吾, 外套と青空:
- それをきくと、見る見る眼前に一縷の光が流れこんでくるやうに感じた。
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- 1948, 久米正雄, 受驗生の手記:
- 山下の實例が、佐藤の云ふ事だから眞僞は分らぬにしても、或ひはといふ一縷の望を抱かせた。
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- 1953, 牧野富太郎, 植物一日一題:
- それでこの書へこうして出しておいたなら、世間は広いし識者も多いことだからあるいは解決がつかないもんでもなかろうと、一縷の望みを繋いでかくは物し侍べんぬ。
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